今回、ご紹介する本はコチラ
岐路に立つ『動物大国』:動物たちにとっての「幸せ」とは?(太田匡彦、北上田剛、鈴木彩子著)
本書は、2020年9月18日からの朝日新聞、朝日新聞デジタルでの連載「動物たちはどこへ 変わりゆく動物園」と同年11月1、8日に朝日新聞に掲載した「フォーラム 動物園、どう思う?」の記事を大幅に加筆し、再構成したものになります。
いくつかの記事は新聞、ネット記事、Twitterでちらほら見た方も多いかもしれません。
内容は、各章で動物園における余剰動物、動物交換や移動、繁殖と動物福祉、保全など今の動物園が直面している問題について書かれています。
そして、最終章でこれからの動物園のあり方について、問いかけています。
多くの動物園関係者が動物園の現状について語り、これほど幅広い内容かつ深堀りした取材をし、書籍としてまとめられたものは少ないと感じます。
動物園業界に詳しい方は、ご存じの内容も多いかもしれませんが、働いて間もない若い飼育員さんや業界に詳しくない方にとっては、動物園の現状について知る一冊になると思います。
また、これから動物園で働くことを志望している方にとっても、こうした問題があることを早くに知っておくべきなのかもしれません。
少し感想を話すと、私は最終章のアンケート結果にあった市民動物園に行く目的と動物園側が定義する役割に大きなギャップがあることが一番印象に残りました。
こうした結果が出たということは真摯に受けとめつつ、動物園で働く身として、より良い方向に行くよう尽力していかなければならないと感じました。
(ただどう動くべきなのかは少し思いあぐねています・・・。)
また、業界外からこうした意見、指摘があることも大切だと思いますが、業界内(あるいは各園内)でも評価し、改善することも必要なのではないかなと感じます。
さらに本書で取り上げられた問題の多くは、動物園業界全体で解決していく課題です。
しかし、動物園に関わる方々がこうした問題を共通認識としておくことと当事者意識を持つことが、今後の動物園には不可欠かなと感じます。
題名にある通り、今の動物園は岐路に立っています。
道は長く険しく、先も明るいものかはわかりませんが、まずは第一歩として本書を一読してみてはいかがでしょうか。